2008年1月27日日曜日

夜スペに思う (1)

少し前に杉並区立和田中学校で、夜間に民間私塾の授業実施を認めることが報じられました。

教育の機会均等の観点から出来る生徒だけを対象に追加で授業を行うのはどうか、という問題や、民間の私塾に校舎を貸し出して授業をさせるということは、教育機関としての公立学校としての役割を放棄しているのではないか、等などの問題点はあるにせよ、僕は和田中学校の取組みは前向きな取組みとして評価したいと思っています。

かく言う僕も最初は否定的に見ていましたが、和田中学校校長の藤原和博さんのサイトを見ると、ただ単に出来る子供にだけ優先的に授業を受けさせて格差を助長させているわけでも、公立学校としての義務を放棄しているわけでも無いことが分かる。

藤原氏の取組みの内、マスコミで紹介されていないものも含めて列挙すると、

①土曜日の午前中に大学生のボランティアによる自習サポート

②夏休みに12日間のサマースペシャルを実施し、夏休みの宿題を終らせるためのサポート

②生徒による授業評価(web で結果を公開)

③家庭でのテレビ視聴時間を1時間15分以内にすることを常時呼びかけ

④4学期制の導入(これのみ、意図がよく分かりませんが…。)

⑤上記の取組みの実行部隊(あるいは実行サポート部隊)として、在校生、卒業生の父兄を巻き込んで地域本部を設立

…と、これだけの新しい取組みをしていることが分かる。また、これらの取組みの結果、杉並区内の中学校における学力調査で第一位になっていることからも、確かな結果を生んでいることは夜スペに関する報道でも取り上げられても良いのではないか。

藤原校長の取組みに共感できるのは、夜スペを『格差』を解消するための方策として実施しているところだ。藤原氏曰く、進学校に進むための、塾費用等は中学校3年間で100万円から200万円かかるが、和田中学校で夜スペなどに参加するための費用は36万円で済むとのこと。200万円かかるか、36万円かかるかというのは決して小さい差異ではない。親の収入レベルによっては、200万円という出費は泣く泣くあきらめざるを得ないレベルであることは間違いないし、親の収入によって、子供の教育機会に埋めがたい差異ができるというのは由々しき現実だと思う。仮に、本当に塾に通うことが進学校に進むための必須条件であるならば、低収入家庭の子供にも塾で学ぶ機会を与える和田中の取組みは格差が拡大しているこの世の中で高評価に値する取組みだと思う。

しかし、しかし、だ。それでも、僕は藤原校長の取組みだけで、日本の教育における根本的な問題が解決するとは全く思わない。藤原校長の取組みは機能不全に陥っている公立学校を地域の力を取り入れたり、民間の力を取り入れたりすることによって正常に機能するようにしているだけであって、教育内容そのものを変革するものではないからだ。

言い換えれば、壊れたテレビが正式に機能するように、スクリーンを取り替えたり、スピーカーを最新式に変えたりしているだけであって、テレビで放送されるコンテンツそのものの変更にまでは、まだまだ及んでいないと思われるからだ。

では、どの教育の中身をどのようなものに変革すればよいのか?
(...『夜スペに思う(2) に続く』)

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