2008年2月22日金曜日

成田空港の航空貨物取扱量(1)

出張の途中で買っエコノミストで意外なデータを発見。表紙のタイトルの通り、今週号のコンセプトは『没落する日本』。没落の一つの具体例として空港、港湾の発着回数や貨物取扱量が出ていたので簡単にご紹介したいと思います。

まず、港湾でのコンテナ取扱量ランキング:

(1980年)
1位ニューヨーク(195万TEU)
4位神戸

(2006年)
1位シンガポール(2,479万TEU)
2位香港
3位上海
4位深圳
5位釜山
6位高雄
23位東京

1980年当時は神戸が日本最大の港だったんだね。2006年に、シンガポールがトップというのは少し意外。東南アジアでの中継基地として便利な位置にあるのだろう。2位から4位までを中国の港が占めているのは、中国の経済成長を考えると、大いに頷ける。また、国家として物流事業に力を入れている韓国の釜山が5位に続いているのもmake sense。

驚いたのは、東京のランキングの低さ。台湾の高雄にも負けているんだね。結局、東京という大消費地に供給する物資の取り扱いは出来ても、高雄のように中国で必要となる物資の中継には全く絡めていないということだろう。無駄な規制や、港湾労働者の人件費、国際業務に堪えられる語学力を持った労働力の不足等が影響しているのではないか。

最近グッドウィルが、禁止されている港湾への人材派遣を行ったということで袋叩きに逢っているけど、上記のようなデータを見ると、人材派遣を禁止して既得権益を守っている場合じゃないと思うんだけど…。

あと、驚いたのは、貨物取扱量の増加の凄さ。1980年と2006年の各一位の港の取扱量を比べると、約12倍に増えている。ボーダーレスエコノミーとか言われても、概念的にしか理解できなかったけど、この数字を見せられると貿易規模の拡大を実感せずにはいられない。

次は空港の旅客数ランキング:

(1992年)
1.ロンドン・ヒースロー(3826万人)
2.フランクフルト・マイン
3.パリ・シャルルドゴール
4.香港
5.成田

(2005年)
1.ロンドン・ヒースロー(6101万人)
2.パリ・シャルルドゴール
3.フランクフルト・マイン
4.アムステルダム・スキポール
8.成田

意外なのは、アメリカの空港がトップ10に一つも入っていないこと。ちなみに、上記ランキングの9位はバンコク、10位はソウルなんだけど、アメリカ最大の空港であるシカゴのオヘア空港がバンコクよりも旅客数が少ないなんてとても驚きだ。鉄道という飛行機に変わる代替的な交通手段のある日本やヨーロッパに比べて、アメリカは恐ろしくのろいAmtrackという鉄道があるだけで、広大な国土を行き来するための代替交通手段は無いに等しく、飛行機に対する依存度はきわめて高いはずだ。

また、NYC一極集中ではなく、シカゴやロス、ダラスなど、地方都市の経済規模も日本の地方として比べても大きいのだから、都市間の移動も多いはずだ。それを考えると、アメリカの空港が一つもtop10にランキングされていないのはとても不思議なのだが、この理由は改めて調べて、自分なりの理由付けを試みたい。

最後に航空貨物取扱量のランキング:

(1992年)
1.成田(129万トン)
2.フランクフルトマイン
3.香港
4.ソウル金浦

(2005年)
1.香港(341万トン)
2.成田
3.ソウル仁川

冒頭で述べたとおり、エコノミストのテーマは『没落する日本』。コンテナ取扱量や、航空旅客数のランキングは確かにそれを裏づけるものだった。しかし、航空貨物取扱量のランキングが92年の1位から2005年に2位になっていることは、『没落』というようりは、むしろ『健闘』として、ポジティブに驚くべきことだと思う。

では、なぜ成田が航空貨物取扱量で世界第2位を維持しているのか?
(成田空港の航空貨物取扱量(2)に続く)

2008年2月4日月曜日

夜スペに思う (2)

日本で教育改革が論じられる時、どのような方策がアジェンダに挙がるのでしょう?

前総理の安倍さんは愛国心を育てるだの、大学の入学時期を9月にして高校卒業者はそれまで遊ばせておくだの、ピントのずれまくったことを言っていましたね。

その他は、小学校での英語教育導入や、ゆとり教育の見直しぐらいでしょうか?

個人レベルで自分の子供の教育を考えるときは一人の人間として十分な教養と人格を備えてほしい、というような思いで考えるものだと思いますが、国家レベルで考える際には、日本という国が今後も発展していくためにはどのような労働力を国家として備えていかないといけないかという視点があってしかるべきです。

そのような視点で教育改革を考えるためのヒントは、最近の経済雑誌の中に山のように溢れています。『格差』、『ワーキングプア』『グローバリゼーション』、『BRICsの台頭』、『中国の毒入り餃子』、『サハリンIIプロジェクト』、『digital divide』、『一人当たりGDPが世界で18位に低下』等など。

格差の拡大の原因が、技術革新と経済のグローバル化に有るとするならば、教育カリキュラムにもITや英語教育を導入あるは強化するのは当然でしょう。また、2050年に中国が世界第一の経済大国になることが予想されるのであれば、中国語教育に全くコミットしていないのは、はっきり言ってヤバイといえるでしょう。ロシアについても同様です。

また、少子化の中で絶対的な就学人口が減少する一方、世界の中で高等教育にアクセスできる人口が増えているということは、世界の市場から認められる商品の開発が日本から生まれる割合がどんどん減っていくことを意味しています。そんな中で、日本の会社が競争力を維持していくためには、全員横並びの金太郎飴を1億人作る教育ではなく、少しでも多くの天才を多くの分野で作っていく必要があることは火を見るよりも明らかで、そのためには、100人が全員同じカリキュラムで、同じ進度で学んでいる今のやり方は間違いです。

①飛び級と、②中国語とロシア語教育の導入、の2つぐらいは今すぐやらなければならない教育改革として議論されるべきでしょう。

①飛び級について

飛び級は、結果の平等主義が骨の髄まで浸み込んでいる日本の選挙民にはあまり魅力的に映らないため、政治家もあえて、選挙公約にはしづらいテーマでしょうが、親の年収によって格差がつくよりも、本人の努力と能力によって差がつく、飛び級制度の方がよっぽど平等で公平といえるでしょう。

日本の高校生は3年生の夏までにカリキュラムのほとんどを終えて冬の受験まではひたすら同じような問題をこなして、生産性ゼロの訓練(not 学習)をしているのが現実です。ならば、さっさと高校は終えて、大学のカリキュラムを始めた方がよっぽどいいでしょう。

また、今の教育システムだと、慶●高校に入っただの、△成中学に入っただの、中身ではなくブランドを競っているだけで、最終的には大学4年間でみんなきっちり等しく頭が悪くなって会社に入ることになりますが、飛び級制度が導入されると、22歳になった時点で、どれだけの学位を持っているのか、中身が問われることになるでしょう。例えば、お絵かきを一生懸命練習して、お受験したり、鶴亀算を何回もして中学校受験したり、何回も微分積分の問題を演習して18歳で東京大学の例えば経済学部に入学し、22歳で卒業するのと、そんなまどろっこしくて非生産的なプロセスはすっ飛ばして、15歳で高校のカリキュラムは終えて、18歳で例えば大阪大学の経済学部を卒業した後、学士入学で工学部に入り、二十歳で早稲田大学経営学部大学院に入り、22歳でファイナンス学科をデリバティブ専攻で修了するのとでは、後者の方が価値があるのは間違い名でしょう(財×省のような一部の閉鎖的な組織を除いては…。)。

②中国語、ロシア語の導入について

BRICSの台頭を考えれば中国語やロシア語、あるいはポルトガル語の中学、高校課程への導入は必須なのは議論の余地は無いでしょう。Wikipediaによると、2039年にはBRICSのGDPはG7を上回り、2050年時点でのGDPは中国、アメリカ、インド、日本、ブラジル、ロシアの順になると予想されています。なにも、全員が全員、中国語やロシア語を勉強する必要があるとは思いませんが、例えば東大の入学枠の3%だけでもいいので、英語ではなく、中国語で受験できるようにするだけでも、日本の外交力や、日本の海外投資の精度にもかなりのインパクトがあるのではないでしょうか?

中途半端な英語をしゃべれる人が100人いる集団よりも、中途半端な英語をしゃべれる人が90人と、中途半端な中国語をしゃべれる人が5人、中途半端なロシア語をしゃべれる人が5人いる集団とでは後者の方が適応力に優れているのは言うまでも無いでしょう。サハリンIIで三菱商事がボラレタことや、中国人が日本のODAによる貢献を全く知らされていないことと、日本の語学教育と全く無関係だと思いますか?

よく外国人が言うことですが、中国語の学習は日本人が漢字文化を共有しているという点で、欧米人に比べてcompetitive edge を持っているのは間違いないし、中国のビジネスマンが英語を話せる割合が、ブラジル人が英語を話せる割合や、ロシア人が英語を話せる割合よりも少ないという点で、中国語を学習する利点が大きい点は無視すべきではないでしょう。

ほんの3%の例外を作るために躊躇している時間的な余裕は無いはずです。