2008年3月27日木曜日

WTI 原油価格1バレル100ドルの意味するもの

投資、金融の世界ではアナリストコメントをそのまま引用し、自分のポジションを説明する方が少なからずいる。しかし、個人的には、だれかの言葉をそのまま信じて行動するのはあまり好きじゃないし、得策じゃないと思う。

精緻な分析や検証は無理であるにしても、キーとなる数字(e.g. 日本のGDP500兆円、東証一部上場株の時価総額400兆円)ぐらいは覚えておいて、それと照らし合わせて、『まぁ、だいたい、こんなもんか』という感覚を持つことは非常に大事だと思っている。

…という信念を持つ私としては、原油価格100ドルという価格は、『実需では説明できないレベル』という良く聞くコメントを自分の知っている数字を使って検証したくなった。

そもそも1バレルというのは何リッターか?あまり日本人にはなじみのないバレルという単位だが、Wikipedia で調べると、約159リットル。1ドル100円で換算すると、

WTI原油価格:  $100/barrel ⇒ $100 × 100円/USD ÷ 159ℓ/barrel ≒ 63円/ℓ

つまり、テキサスで原油を1リッター買うと、63円払わないといけないってことだよね。

では、原油の比較の対象として、我々消費者になじみのあるガソリン価格と比べてみると、だいたい、日本だと、リッター当たり160円ぐらい。でも、日本のガソリン価格は税金で大幅に高くなっているから、アメリカでのガソリン価格に直すことが必要となる。

アメリカでのガロン当たりのガソリン価格が日本でのリッター当たりの値段とだいたい同じ、というのが筆者の感覚なのだが、それを当てはめると、

ガソリン価格: 160円/ガロン ÷ 3.8ℓ/ガロン ≒ 42円/ℓ

えっ! 原油価格がリットル当たり63円なのに、どうして、ガソリン価格がリットル当たり42円になるのか!? んなわけないよな。

日本のリッター当たりのガソリン価格とアメリカのガロン当たりのガソリン価格が同じくらいというのは筆者の10年前ぐらいのアメリカ生活から得た感覚なのだが、これが間違っているのかも知れない…と思って、アメリカのEIA (Energy Information Administration)ガソリン小売価格を調べてみると、アメリカ全土のガソリンの平均小売価格は、$3.259 / ガロン。

ガソリン小売価格: $3.259 / ガロン ≒ 326円/ガロン ≒ 86円/ℓ

とすると、原油はリットル当たり63円に対し、ガソリン(小売価格)は86円。差は23円か。なんか妥当なような気もするし、原料と最終製品の差としてはちょっと少ないような気もするな…。

でも、そもそも、これって原油とガソリンを比べているわけで、当然、所謂Apple to Apple の比較じゃない。

どうも業界では、3-2-1 Crack Spread という概念があるようで、『平均的な製油業者は3バレルの原油から、2バレルのガソリンと、1バレルのディーゼルを精製することができる。この比率に基づいて1バレルの原油から得られる製油業者の儲けを計算したものを3-2-1 Crack Spread と言う』ということのようだ。

同じようにEIA (Energy Information Administration)のサイトでディーゼルの全米平均小売価格を調べてみると、$3.989/ガロンになっている。

ディーゼル小売価格: $3.989/ガロン ≒ 399円/ガロン ≒ 105円/ℓ

これを3:2:1 の比率で考えると

1ℓの原油から得られるのはガソリン2/3ℓと、ディーゼル1/3ℓ。

それぞれに小売価格をかけて足し合わせると、

小売価格加重平均: 86円/ℓ×2/3 + 105円/ℓ×1/3=92円/ℓ

つまり、63円/ℓの原油から、92円(税込)/ℓの最終製品(ガソリンとディーゼル)が生産されているということだ。

差は29円。

この差で、精製コストが税金、ガソリンスタンドまでの運送料金、それから、精製業者や小売業者の儲けをカバーできなきゃいけないので、それが十分かどうかってのが、結局WTI原油価格が割高か否かの一つの判断材料になるんじゃないだろうか?

ガソリンとディーゼルの税金はそれぞれ、39.9¢/ガロンと、46.45¢/ガロン(州税と連邦税合計)だから、原油1リットルへの影響を計算すると、約11円/ℓ(計算略)。

だとすると、18円(= 29-11円)で、精製コストやガソリンスタンドまでの運送料金、それから、精製業者や小売業者の儲けのすべてをカバーしないといけないことになる。

ちなみに、18円というのは小売価格加重平均92円/ℓの20%。これはスプレッドとして十分なのか、否か? 即ち、WTI 100ドルというのは割高なのか、割安なのか?

んーっ、なんとなくスプレッドとしては十分じゃないと思うが…。


今、 柴田さんの資源インフレを読んでいます。また新しいことがわかりましたら当ブログにアップしたいと思っています。




(参考リンク)

2008年3月25日火曜日

オーストラリアの義務投票制度

選挙のたびに投票率の低さが問題になります。

また、雨の日には宗教団体系の政党が有利になったりするなんてこともよく言われますね。

一つの解決策はオーストラリアでも採用されている強制投票制度ではないでしょうか?

非難を覚悟で率直に言うと、合理的(≠道徳的、≠倫理的)な個人にとって、投票に行くのは極めてナンセンスな選択です。

なぜならば、よっぽど暇を持て余しており、投票所に行くこと自体に楽しみを見出す人ならともかく、そうでない人にとっては、(a)余暇の時間を使って、投票に行き、0.00…001%の確率で選挙結果に影響を与えるか、(b)ほぼ100%の確率で自分のやりたいことをやるか、という選択になるからです。普通に考えりゃ、そりゃ、(b)の選択をしますよね?

だって、(a)の選択をした場合、投票によって自分にとって望ましい政治的な結果がもたらされる確率は以下の3つの確率の積として計算されます:

① 自分にとって望ましい候補者を選定できる確率
②自分の投票によって、自分の支持している候補者が当選する確率
③当選した候補者が当選後に公約を守る確率


①の確率は国会議員レベルでマスコミへの露出の多い人の場合は、ある程度候補者が何をやりたいか、またどのようなことをやってきたのかも確認することができるので、そこから自分にとっての望ましい候補を選定できる確率はそう低くないかもしれません。ただ、市議会議員や区議会議員の場合は、マスコミへの露出もそんなにないし、ウェブサイトを見ても『市民の暮らしを良くする』だの、『安心できる区民の暮らし』だの、具体性の無いワケの分からないスローガンばかりで具体的な政策が全く見えないので、この確率はとても低いものになります。

②の確率は限りなく低いといえます。だって、一票差で自分の支持している候補が敗れない限り、自分が投票に行っても行かなくても結果は同じわけですから。

③の確率はさほど低くはないかも知れませんが、投票した後の行動をモニタリングする術が無いので、測定自体が困難といえます。また、選挙の時にホットな話題になるような問題については、選挙公約にもなっているでしょうから、政治家も公約を守り、投票したあなたの利益にかなう行動を取る可能性も比較的高いかもしれませんが、当選後、3年後、あるいは4年後に起こる問題について、そもそも選挙時の公約にもなっていないわけですから、選挙民も政治家に対して『てめぇ、約束破ったな!』と言えないし、政治家も、『そんなん、俺がこうするなんて、約束したことなんてなかったじゃん!』と開き直れるわけです。参議院議員の場合、任期は6年になるので、こうしたリスクはますます高くなります。

①、②、③の確率をそれぞれ掛け合わせると、わざわざ投票に行くことによって自分が得られるものの期待値は極めて低くなっちゃうわけです。

一方、(b)の選択、即ち、投票に行かず、自分のやりたいことをやる場合は、ほぼ100%の確率で目的は達成できるでしょう。もちろん、ゴルフをやろうと思って、1時間以上田舎までドライブしたのにコースの手前で突然雨が降りだしたりすることもあるかもしれないし、映画を見るためにバージンシネマに行ったのに満員で入れないこともあるかもしれませんが、それでも、(a)の選択の期待値に比べれば全然高いと言えるでしょう。

ですから、『有権者の意識が低い!』などと、嘆いてみたり、批判してみたりするのは全く的外れというもんです。批判すべきは制度なんですから。

とはいえ、その制度を変えるためにはやはり投票に行かないと始まらないワケですから、やはり、投票に行くことは大事だし、投票率を高めるための努力は怠ってはいけないでしょう。

問題は、その方法で、大の大人に、『選挙は国民の義務だ!』なんてbull shitを言ってみたところで、何にも変わらないわけですから、いっそのこと、オーストラリアのように投票に行かなければ罰金を取るという方法もありではないでしょうか?

随分前置きが長くなりましたが、オーストラリアでは、投票は義務であり、正当な理由なしに投票しなかった有権者に対して、罰金20豪ドル(2,000 円程度)を課しています。結果として投票率は90%以上をコンスタントにキープしているとのこと。

罰金を取られるぐらいなら投票に行く人も増えるでしょうし、投票にイヤイヤでも行く人が増えれば、『せっかくワシらの貴重な時間をとってるんだから、公約もわかりやすいモンを作らんかい!』という声も大きくなるだろうし、『せっかく投票したったんやから、約束守れ!』とか、『公約守ってるのか、ちゃんと報告せい!』と言った健全な議論に発展すると思うのだが…。

でも、やっぱ日本だし、変わらんのだろうな…。

やっぱ、選挙や政治に期待するんじゃなくて、自助努力しか無いですね。この国は。

(参考リンク)

津久井進の弁護士ノート 強制投票制度

強制投票制度(wikipedia)



2008年3月18日火曜日

Yahoo!知恵袋で『"iTunes Music"フォルダの移動の仕方』を質問

勝間さんの本に触発されて、iPodでオーディオブックを聴くことを初めてしばらく経ちました。

効果はテキメン!やっぱ、たかだか30分の通勤の時間でも有効に使えば、知識の蓄積のスピードが全然違いますね。

Barack Obamaの『Audacity of Hope』Barton Biggsの『ヘッジホッグ』、そのほかにもハーバードビジネスレビューの記事をダウンロードして聞いています。

聞き初めて分かったことですが、やはり、隙間の時間を活用するのであれば、なるべく短くて内容のあるものがいいですね。Barack Obamaの本も面白いのですが、普段の通勤の中で聴くにはあまりにも長すぎる!

一つのストーリーを読み終えるまでに中断される回数が多いので、話がとぎれとぎれになって、せっかくのいい話のはずが、印象が薄まってしまう。そういう観点からはハーバードビジネスレビューの記事がちょうどいいぐらいですね。長さは1時間20分だから、1日の通勤の行き帰りで聴き終えることができちゃいます。また、ドライブの時に聞くにもちょうどいいぐらいの長さですね。

ところで、このitune、やっかいなのは、たくさん曲やオーディオブックをダウンロードすると、ハードディスクの容量を喰ってしまうこと。おそらくこれが原因で私のVaioがフリーズするようになったので、近くのBic Cameraの兄ちゃんに対応策を相談しました。

対策として指摘されたのは:
C driveにはなるべくアプリケーションソフトだけをセーブするようにして、d driveにダウンロードした曲をセーブするようにするということ。

どうやればいいのか、yahoo! 知恵袋で質問してみました。で、頂いた答えがこれ↓

----------------------------------------------------------------------------------

回答日時: 2008/3/18 11:21:35
こちらを参考にどうぞhttp://docs.info.apple.com/article.html?artnum=305451-ja

----------------------------------------------------------------------------------

完璧な答えがわずか30分の間に返って来て感動です!

以前なら、知り合いに聞きまくって解決するか、土日の貴重な時間を使って、カスタマーサポートに聞くかのいずれかでしたが、こんなに早く解決するとは!

使いこなせている人には大したことじゃないのかもしれないけど、IT化を意識して間もない私には本当感動でした!

当たり前のことですが、これからの時代、ウェブをいかに使いこなせるかで、入ってくる情報の量や質に圧倒的な違いが出てくると思う。年をとるにつれて自分の行動パターンを変えるのが億劫になるものだが、50ぐらいになって、20代、30代の部下から『オッサン』扱いされないためにも、学習することを継続したいものだ。