2008年3月25日火曜日

オーストラリアの義務投票制度

選挙のたびに投票率の低さが問題になります。

また、雨の日には宗教団体系の政党が有利になったりするなんてこともよく言われますね。

一つの解決策はオーストラリアでも採用されている強制投票制度ではないでしょうか?

非難を覚悟で率直に言うと、合理的(≠道徳的、≠倫理的)な個人にとって、投票に行くのは極めてナンセンスな選択です。

なぜならば、よっぽど暇を持て余しており、投票所に行くこと自体に楽しみを見出す人ならともかく、そうでない人にとっては、(a)余暇の時間を使って、投票に行き、0.00…001%の確率で選挙結果に影響を与えるか、(b)ほぼ100%の確率で自分のやりたいことをやるか、という選択になるからです。普通に考えりゃ、そりゃ、(b)の選択をしますよね?

だって、(a)の選択をした場合、投票によって自分にとって望ましい政治的な結果がもたらされる確率は以下の3つの確率の積として計算されます:

① 自分にとって望ましい候補者を選定できる確率
②自分の投票によって、自分の支持している候補者が当選する確率
③当選した候補者が当選後に公約を守る確率


①の確率は国会議員レベルでマスコミへの露出の多い人の場合は、ある程度候補者が何をやりたいか、またどのようなことをやってきたのかも確認することができるので、そこから自分にとっての望ましい候補を選定できる確率はそう低くないかもしれません。ただ、市議会議員や区議会議員の場合は、マスコミへの露出もそんなにないし、ウェブサイトを見ても『市民の暮らしを良くする』だの、『安心できる区民の暮らし』だの、具体性の無いワケの分からないスローガンばかりで具体的な政策が全く見えないので、この確率はとても低いものになります。

②の確率は限りなく低いといえます。だって、一票差で自分の支持している候補が敗れない限り、自分が投票に行っても行かなくても結果は同じわけですから。

③の確率はさほど低くはないかも知れませんが、投票した後の行動をモニタリングする術が無いので、測定自体が困難といえます。また、選挙の時にホットな話題になるような問題については、選挙公約にもなっているでしょうから、政治家も公約を守り、投票したあなたの利益にかなう行動を取る可能性も比較的高いかもしれませんが、当選後、3年後、あるいは4年後に起こる問題について、そもそも選挙時の公約にもなっていないわけですから、選挙民も政治家に対して『てめぇ、約束破ったな!』と言えないし、政治家も、『そんなん、俺がこうするなんて、約束したことなんてなかったじゃん!』と開き直れるわけです。参議院議員の場合、任期は6年になるので、こうしたリスクはますます高くなります。

①、②、③の確率をそれぞれ掛け合わせると、わざわざ投票に行くことによって自分が得られるものの期待値は極めて低くなっちゃうわけです。

一方、(b)の選択、即ち、投票に行かず、自分のやりたいことをやる場合は、ほぼ100%の確率で目的は達成できるでしょう。もちろん、ゴルフをやろうと思って、1時間以上田舎までドライブしたのにコースの手前で突然雨が降りだしたりすることもあるかもしれないし、映画を見るためにバージンシネマに行ったのに満員で入れないこともあるかもしれませんが、それでも、(a)の選択の期待値に比べれば全然高いと言えるでしょう。

ですから、『有権者の意識が低い!』などと、嘆いてみたり、批判してみたりするのは全く的外れというもんです。批判すべきは制度なんですから。

とはいえ、その制度を変えるためにはやはり投票に行かないと始まらないワケですから、やはり、投票に行くことは大事だし、投票率を高めるための努力は怠ってはいけないでしょう。

問題は、その方法で、大の大人に、『選挙は国民の義務だ!』なんてbull shitを言ってみたところで、何にも変わらないわけですから、いっそのこと、オーストラリアのように投票に行かなければ罰金を取るという方法もありではないでしょうか?

随分前置きが長くなりましたが、オーストラリアでは、投票は義務であり、正当な理由なしに投票しなかった有権者に対して、罰金20豪ドル(2,000 円程度)を課しています。結果として投票率は90%以上をコンスタントにキープしているとのこと。

罰金を取られるぐらいなら投票に行く人も増えるでしょうし、投票にイヤイヤでも行く人が増えれば、『せっかくワシらの貴重な時間をとってるんだから、公約もわかりやすいモンを作らんかい!』という声も大きくなるだろうし、『せっかく投票したったんやから、約束守れ!』とか、『公約守ってるのか、ちゃんと報告せい!』と言った健全な議論に発展すると思うのだが…。

でも、やっぱ日本だし、変わらんのだろうな…。

やっぱ、選挙や政治に期待するんじゃなくて、自助努力しか無いですね。この国は。

(参考リンク)

津久井進の弁護士ノート 強制投票制度

強制投票制度(wikipedia)



4 件のコメント:

tcafe43 さんのコメント...

日本は変に性善説に立っているとつくづく思います。
欧米化するなんていう言い方をよくしますけど、~化というのは、本来的な人間の本能に近い形になっているだけのような気がします。
そう考えると理想論だけで嘆くより、現実にもう少しまともに目を向ける国なって欲しいものです。
50年くらいのスパンで考えれば日本も変わりますかねぇ~

匿名 さんのコメント...

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義務投票ですか・・・・・・はは、面白いアイディアですね。
元々統率者を決めてやっていく事自体誰かが決めた事ですし、それはそれで癖になって良いのかもしれないですね。

どちらにしても、日本では難しいのでしょうね。

finprodrifting さんのコメント...

tcafe43さん、コメント有難うございます。50年後には日本はどうなっているのか考えると少し怖いですね。本気で危惧しています。

finprodrifting さんのコメント...

摩耶さん、コメント有難うございます。応援しておりますので頑張ってくださいね。